山口県で医療モール開業をお考えの方へ向けて、県内事例やメリット・注意点をわかりやすく整理します。
医療モールとは、複数の診療科クリニックや調剤薬局が1カ所に集まる施設で、開業形態は主に「ビレッジ型(1つの敷地に戸建てクリニックが集合)」「ビル型(1棟のビルに集合)」「併設型(商業施設等のフロアに集合)」の3種類に分けられます。患者にとっては複数の医療サービスを1カ所で受けられる利便性があり、全国的に拡大傾向にあります。
山口県では、厚生労働省の令和5年医療施設調査によると病院139施設、一般診療所1,194施設で、二次医療圏は岩国・柳井・周南・山口/防府・宇部/小野田・下関・長門・萩の8圏域に区分されています(「山口・防府」「宇部・小野田」はそれぞれ1圏域)。都市部と地方部で医療資源の偏在が進み、地域ごとに開業ニーズが異なる点が特徴です。
参照元:政府統計の総合窓口|医療施設調査 令和5年医療施設(静態・動態)調査 都道府県編(https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00450021&tstat=000001030908&cycle=7&tclass1=000001222880&tclass2=000001222882&tclass3val=0)
参照元:メディカルジャパン(https://www.medical-jpn.jp/hub/ja-jp/blog/mall.html)
参照元:メディカルプラス「山口県の医院開業動向」(https://www.medicalplus.info/trend/area/yamaguchi/)
医療モールは、アクセスの良い幹線道路沿いや住宅地隣接地、商業施設の一角など、人が集まりやすい立地に整備される傾向があります。
複数の診療科が同じ場所に集まっているため、モール全体で「かかりつけ拠点」として認知されやすく、開業直後から患者が来院しやすい環境をつくれる点が大きなメリットです。
医療モールでは待合室や駐車場等の共用部を他クリニックと分担できるため、単独開業に比べて初期投資を抑えやすくなります。
開業前の一定期間、賃料が発生しないフリーレント制度が用意されるケースもあり、集患環境の良さと合わせて事業計画の妥当性が示しやすく、金融機関からの融資審査でも有利に働きやすいとされます。
医療モール内に異なる診療科が揃っていれば、モール内の他クリニックへスムーズに紹介・逆紹介が可能です。
たとえば内科と眼科が同居していれば、糖尿病網膜症の早期発見と治療につながるなど、専門医同士の連携により診療の質を高められるほか、患者の受診負担も軽減できます。
山口県で医療モール開業を検討する際は、以下のような注意点も押さえておく必要があります。
第一に、好立地であるがゆえに賃料や共益費といった固定費が高くなりやすく、開業直後の資金繰りを圧迫するリスクがあります。第二に、モール側が設計・工事業者や医薬品卸を指定するケースがあり、相見積もりが取れず結果的にコストが割高になる可能性があります。
第三に、モール内クリニック同士の人間関係が悪化すると、紹介連携が機能せずメリットを打ち消してしまう恐れもあります。単独開業と比べて経営自由度が制限される側面も理解した上で検討することが重要です。
山口市大内千坊にある新大内メディカルモールは、循環器内科・整形外科・皮膚科・ドライブスルー併設調剤薬局が入居する医療モールです。
2024年5月には「ながい眼科」(山口市大内千坊4丁目14番13号)が新規開院し、白内障・緑内障手術等にも対応。ながい眼科分だけで駐車場42台、モール全体で175台分が確保されており、住宅地に近く地域住民の利便性が高い施設として稼働しています。
参照元:防長経済新報社「山口市大内に新規開院予定!」(https://bkss.co.jp/202401/3297/)
参照元:防長経済新報社「大内医療モール内に新規開院・・・ながい眼科」(https://bkss.co.jp/2024%E5%B9%B45%E6%9C%88/3502/)
下関エリアでは、下関市細江町周辺で「メディカルモールベイスクエア下関」が医療モール物件として紹介されています。下関駅に近い港湾エリアで、県内医療モール物件の一覧サイトにも山口県の代表的な物件として掲載されています。詳細な入居診療科や規模は募集時期により異なるため、最新情報は運営会社・仲介会社の公開資料での確認が必要です。
参照元:日経ヒューマンリソシス「山口県の医療モール物件一覧」(https://nm-kaigyo.nikkeihr.co.jp/property/yamaguchi/medicalmall/)
山口県内の医療モール系開業は山口市・下関市にとどまらず、宇部市や防府市などにも広がっています。宇部市西岐波周辺では耳鼻咽喉科等の新規開業物件が募集されており、開業支援会社を通じて診療圏調査から物件選定までサポートを受けられる体制が整っています。人口10万人あたり医師数が全国平均を大きく上回る宇部・小野田医療圏など、エリア特性を踏まえた立地選定が鍵となります。
参照元:ライジング開業医支援サイト「宇部市西岐波周辺 新規開業物件」(https://rising-japan.org/kaigyo/property/宇部市西岐波周辺-新規開業物件/)
山口県で医療モール開業を成功させるには、次の3点が重要です。1つ目は、二次医療圏ごとの医師偏在を踏まえた診療圏調査です。宇部・小野田は人口10万人あたり医師数323.39人(令和2年時点、JMAP)と全国平均269.2人を大きく上回る一方、複数の医療圏では全国平均を下回るなど、標榜科目ごとに需要が大きく異なります。2つ目は、モール全体のコンセプトと自院の診療科の相性確認です。3つ目は、県の支援制度の活用で、山口県医療政策課は「重点医師偏在対策支援区域における診療所の承継・開業支援事業」を実施しており、対象区域での開業では補助対象となる可能性があります。
参照元:厚生労働省|令和2(2020)年 医師・歯科医師・薬剤師統計の概況[※PDF] (https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/ishi/20/dl/R02_1gaikyo.pdf)
参照元:地域医療情報システム(日本医師会)|山口県 宇部・小野田医療圏(https://jmap.jp/cities/detail/medical_area/3505)
山口県での医療モール開業は、集患のしやすさや初期投資の抑制、他診療科との連携といったメリットがある一方、固定費や工事業者指定、モール内の人間関係など特有の注意点も存在します。
県内では新大内メディカルモールをはじめ、下関・宇部・防府エリアでもモール型開業が広がりつつあります。二次医療圏の特性と県の支援制度を踏まえ、自院のビジョンに合った立地・形態を選ぶことが、山口県での開業成功への近道です。
