クリニック開業では、物件取得・内装工事・医療機器の導入などにまとまった資金が必要です。ここでは、主な融資先と申請の流れなどをまとめています。
日本政策金融公庫は、政府系金融機関として創業や中小企業を支援しており、個人事業主として開業する医師は「新規開業・スタートアップ支援資金」を利用できる可能性があります。内装工事や医療機器の導入に必要な設備資金、開業後の人件費・賃料などに充てる運転資金に活用できます。
融資限度額は7,200万円で、返済期間は設備資金が20年以内、運転資金が10年以内です。据置期間を設定できる場合もあるため、開業直後の返済負担を抑えたい場合にも検討しやすいでしょう。融資条件は事業計画や自己資金、返済見込みなどを踏まえて審査されるため、早めの準備が重要です。
引用元:日本政策金融公庫|新規開業・スタートアップ支援資金(https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/01_sinkikaigyou_m.html)
開業予定地の医師会や、提携する医師信用組合・金融機関の融資制度も確認しましょう。制度によっては、診療所の取得費用・医療機器の導入費・運転資金に加え、医師会への入会にかかる費用を資金使途に含められる場合があります。
また、地方自治体が金融機関や信用保証協会と連携して実施する制度融資も選択肢です。一定の条件を満たすことで、金利や信用保証料に関する支援を受けられる場合があります。対象業種や融資条件は地域ごとに異なるため、開業地の医師会や自治体、取扱金融機関へ早めに相談することが大切です。
都市銀行は、全国規模で事業を展開する大手金融機関です。豊富な資金力や幅広い商品を持つ一方、地域によっては支店数が限られることもあります。開業予定地で相談できる窓口があるか、あらかじめ確認しておきましょう。
地方銀行は、地域に根差して営業する金融機関です。開業予定地の不動産事情や地域の医療ニーズに関する情報を持つ場合もあり、クリニック開業時の相談先として検討できます。融資後の資金管理も含め、メインバンクとして利用するケースもあります。
信用金庫は、営業地域を限定し、地域の中小企業や個人事業主を主な利用者とする協同組織の金融機関です。地域密着型の相談を受けやすい一方、融資額によっては単独での対応が難しい場合もあります。
必要資金や融資条件を確認したうえで、他の金融機関と併せて相談しましょう。
独立行政法人福祉医療機構(WAM)は、病院や診療所などの医療施設の整備を対象に融資を行う独立行政法人です。建築資金・土地取得資金・機械購入資金・一定の長期運転資金などが対象となり、長期の返済計画を立てやすい点が特徴です。
ただし、無床診療所や歯科診療所の新設は、診療所不足地域での開設など、利用できるケースが限られます。融資には担保設定が必要となる場合もあるため、開業予定地や診療内容が対象となるか、早めに確認しておきましょう。
まずは、融資額の上限、金利、返済期間、担保や保証人の要否を確認します。金融機関によっては、団体信用生命保険への加入を求められる場合もあります。金利だけで判断せず、保証料や事務手数料などを含めた総返済額を比較することが重要です。
融資の申込みでは、本人確認書類、医師免許証の写し、経歴書、事業計画書、資産・負債の状況が分かる資料などを求められます。物件資料や内装工事、医療機器の見積書も必要です。申込先ごとに必要書類は異なるため、早めに確認して不足なく準備しましょう。
書類提出後は、金融機関の担当者と面談します。面談では、診療圏分析や患者数の見込み、診療方針、資金使途、返済計画などについて確認されます。事業計画書に記載した内容を、自分の言葉で具体的に説明できるように準備しておきましょう。
金融機関は、事業計画の実現性、自己資金、医師としての経歴、借入後の返済可能性などを踏まえて審査します。必要に応じて追加書類を求められることもあります。審査期間は申込先や案件内容によって異なるため、物件契約や工事スケジュールには余裕を持たせることが大切です。
開業予定日から逆算し、必要書類の準備や追加確認にかかる期間も見込んで申請時期を設定しましょう。
審査に通過すると、融資条件を確認したうえで金銭消費貸借契約を締結します。契約後、指定口座への入金や、設備業者・工事会社への直接振込などの方法で融資が実行されます。資金の入金時期は融資先によって異なるため、支払予定日との調整も忘れずに行いましょう。
融資審査では、開業後に安定して返済を続けられる事業計画かを確認されます。診療圏の人口・競合状況・想定患者数・診療単価・診療日数などを根拠とともに示しましょう。設備投資額・人件費・家賃などの支出も具体的に算出し、収支計画と返済計画に無理がないか検討することが重要です。
申込者本人の信用情報・資産状況・勤務医時代の収入実績も審査対象です。クレジットカードやローンの返済状況・既存借入の残高・自己資金などが確認されます。支払い遅延や返済負担がある場合は、事前に整理しておくことが大切です。経歴・専門性・開業に向けた準備状況も説明できるようにしましょう。
融資の金利には、主に固定金利と変動金利があります。固定金利は返済額を見通しやすく、長期の設備資金に向いています。変動金利は借入時の金利が低い場合がある一方、将来的な金利上昇で返済額が増える可能性があります。借入期間や資金繰りへの影響を踏まえ、返済計画に合う金利タイプを選びましょう。
クリニック開業では、物件取得費や内装工事費、医療機器費に加え、開業後の運転資金も見込んだ資金計画が欠かせません。融資先ごとの条件や金利、返済期間を比較し、事業計画と返済見通しを具体的に整理しておきましょう。余裕を持って準備を始めることで、開業スケジュールに合わせた資金調達につながります。
また、開業支援に詳しい税理士やコンサルタントにも相談し、資金計画に見落としがないか確認すると安心です。
