山口県でクリニックを開業する際は、診療圏や競合クリニックの数だけでなく、候補地が「外来医師多数区域」に該当するかどうかも確認しておく必要があります。
外来医師多数区域で新たに診療所を開設する場合、地域で不足する医療機能を担うよう要請されるほか、開設時に実施予定を報告するなど、通常の開業準備に加えて対応が必要です。
本記事では、山口県の外来医師多数区域と、該当地域でクリニックを開業する際のポイントを解説します。
外来医師多数区域とは、診療所医師の地域偏在を示す「外来医師偏在指標」が、全国の二次医療圏のうち上位33.3%に該当する区域です。
外来医師偏在指標は単純な人口10万人あたりの医師数ではなく、地域の人口構成や外来受療率、医師の性別・年齢構成による労働時間の違いなどを考慮して算出されています。
そのため、「外来医師多数区域=すべての診療科で医師が余っている地域」という意味ではありません。患者の流出入やへき地診療所の存在などによって指標が高くなることもあり、実際の開業判断では地域ごとの医療需要や競合状況を個別に確認することが必要です。
参照元:厚生労働省|00 医師偏在指標・計算式[※PDF](https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000665196.pdf)
参照元:山口県公式HP|外来医療提供体制の確保について(https://www.pref.yamaguchi.lg.jp/soshiki/45/247815.html)
山口県では、以下の3つの二次医療圏が外来医師多数区域に設定されています(2026年8月時点)。
| 外来医師多数区域 | 対象となる市町 |
|---|---|
| 宇部・小野田圏域 | 宇部市、美祢市、山陽小野田市 |
| 下関圏域 | 下関市 |
| 萩圏域 | 萩市、阿武町 |
したがって、宇部市・美祢市・山陽小野田市・下関市・萩市・阿武町で新たに一般外来を行う診療所を開設する場合は、外来医師多数区域における開業として、山口県が定める運用を確認する必要があります。
ただし、対象地域に含まれるという理由だけでクリニックの新規開業が禁止されるわけではありません。開業そのものは可能ですが、地域で不足している医療機能への協力を求められる点を開業計画へ織り込んでおく必要があります。
参照元:山口県公式HP|外来医療提供体制の確保について(https://www.pref.yamaguchi.lg.jp/soshiki/45/247815.html)
山口県では、外来医師多数区域で新たに診療所を開設する医師に対して、「地域で不足する医療機能」を担うよう要請しています。
原則として求められるのは、次の3つの機能です。
| 求められる医療機能 | 具体的な対応例 |
|---|---|
| 初期救急 | 在宅当番医制や休日・夜間急患センターへの参加など |
| 在宅医療 | 往診・訪問診療への対応など |
| 公衆衛生 | 学校医・産業医・予防接種などへの協力 |
具体的に求められる内容や例外的な取り扱いについては、宇部・小野田圏域、下関圏域、萩圏域でそれぞれ運用要綱が定められています。
例えば診療科の性質上、すべての機能を担うことが難しい場合も考えられるため、開業予定地を管轄する保健所などへ早い段階で確認しておくと良いでしょう。
参照元:山口県公式HP|外来医療提供体制の確保について(https://www.pref.yamaguchi.lg.jp/soshiki/45/247815.html)
山口県の外来医師多数区域で新たに診療所を開設する場合、所管する健康福祉センター(保健所)または下関市立下関保健所へ開設届などを提出する際に、「地域で不足する医療機能の実施(予定)報告書」もあわせて提出します。
報告した内容は、医師会などの関係機関へ提供されるほか、外来医療について協議する地域医療構想調整会議でも共有・公表されます。
地域で不足する医療機能を担う場合は、実施内容が協議の場で報告されます。
一方、要請された医療機能を担わない場合には、地域医療構想調整会議への出席を求められ、開業者の方針などについて協議する流れとなります。
開業直前になって対応を検討すると、診療時間やスタッフ配置、事業計画の見直しが必要になることも考えられます。候補地が外来医師多数区域に該当する場合は、物件契約前の段階から制度を確認しておきましょう。
参照元:山口県公式HP|外来医療提供体制の確保について(https://www.pref.yamaguchi.lg.jp/soshiki/45/247815.html)
外来医師多数区域と混同しやすい制度として、2026年に制度化された「外来医師過多区域」があります。
外来医師多数区域は、外来医師偏在指標が全国の上位33.3%に入る地域です。一方、新制度の外来医師過多区域は、外来医師偏在指標に加えて可住地面積あたりの診療所数なども考慮し、特に外来医師が多い地域を都道府県が指定するものです。
| 外来医師多数区域 | 外来医師過多区域 | |
|---|---|---|
| 主な考え方 | 外来医師偏在指標が全国上位33.3% | 外来医師が特に集中している区域 |
| 山口県 | 宇部・小野田、下関、萩の3圏域 | 国が2026年3月に示した候補区域には含まれていない |
| 新規開業への主な対応 | 不足する医療機能の提供要請・実施予定の報告など | 指定区域では原則として開業6カ月前までの事前届出などが必要 |
厚生労働省が2026年3月27日に公表した外来医師過多区域の候補は全国9医療圏で、山口県内の医療圏は候補に含まれていません。
したがって、2026年8月時点では、山口県の外来医師多数区域であることだけを理由に「開業6カ月前までの事前届出」が必要になるわけではありません。
ただし、外来医師過多区域は今後指定状況が変わる可能性があるため、開業時には厚生労働省・山口県の最新情報を確認してください。
参照元:厚生労働省|医師偏在対策について[※PDF](https://www.mhlw.go.jp/content/10801000/001634535.pdf)
外来医師多数区域だからといって、すべての診療科が過密とは限りません。内科が多くても精神科や産婦人科が少ないなど、診療科によって地域内の需給バランスは大きく異なるためです。
開業候補地を検討する際には、人口10万人あたりの医師数だけで判断せず、標榜科目別の施設数や既存クリニックの所在地、医師の専門性、診療時間などまで確認しましょう。
休日・夜間診療への参加や往診、学校医などを担う場合、院長やスタッフの稼働時間にも影響します。
開業後に追加対応するのではなく、地域で不足する医療機能への協力を前提に診療日・人員配置・収支計画を設計しておくことで、無理のない運営につなげやすくなります。
外来医師多数区域では、既存クリニックと患者を取り合うだけの開業戦略は避けたいところです。
専門外来、在宅医療、休日診療など既存院が十分に対応できていない機能を調査し、「地域でどの医療機能を担うクリニックなのか」を明確にすることが重要です。
診療圏調査では人口と競合数だけでなく、地域医療構想や外来医療計画も確認し、行政が不足していると判断している機能と自院の専門性が合致するか検討しましょう。
山口県では、2020年4月以降、一定の医療機器を新たに設置・更新する医療機関に対して、医療機器の共同利用計画の提出を求めています。
対象となる主な医療機器は以下の通りです。
共同利用を行わない場合でも、その理由などを記載した計画書の提出が必要です。画像診断機器を導入する整形外科や脳神経外科などでは、物件・資金計画とあわせて共同利用に関する手続きも確認しておきましょう。
参照元:山口県公式HP|外来医療提供体制の確保について(https://www.pref.yamaguchi.lg.jp/soshiki/45/247815.html)
山口県では、宇部・小野田圏域、下関圏域、萩圏域が外来医師多数区域となっています。ただし、外来医師多数区域だから開業できないわけではなく、診療科や立地によっては新規開業の余地もあります。
重要なのは、競合クリニックの状況と地域で不足している医療機能をセットで確認することです。候補地ごとに診療圏調査を行い、患者需要だけでなく、初期救急・在宅医療・公衆衛生への協力まで含めて開業後の運営をシミュレーションしましょう。
また、外来医療をめぐる制度は2026年の医療法改正などによって変化しています。物件契約や融資実行を進める前に、山口県や所管する保健所へ最新の手続き・対象区域を確認しておくことが大切です。
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