クリニック開業では、事前準備の不足が開業後の経営や診療体制に影響するでしょう。ここでは、代表的な失敗事例と、開業前に押さえたい対策をまとめています。
高級住宅街の駅前に開業したものの、周辺に内科が多く、十分な患者数を確保できなかった事例です。物件の立地条件だけを重視して高額な賃料や内装費、人件費をかけた結果、借入金の返済が資金繰りを圧迫しました。 さらに、既存クリニックとの差別化が不十分なまま広告費を増やしても、集患につながらなかったとされています。開業地を選ぶ際は、駅からの距離や知名度だけで判断せず、競合の診療内容・地域の患者層・自院が提供できる診療の強みを診療圏調査で確認するのが重要です。無理のない資金計画とあわせて検討しましょう。
参照元:税理士法人テラス/社労士法人テラス(https://trc-tax.com/kaigyoui/textbook-053/)
開業当初は一定の患者数があっても、診察時の説明不足や保護者への配慮に欠ける対応が続くと、再診につながらず来院数が減少するおそれがあります。小児科の事例では、子どもの症状や保護者の不安を十分にくみ取れず、口コミで対応への不満が広がった結果、経営が悪化したとされています。
特に地域密着型のクリニックでは、患者や家族との信頼関係が重要です。丁寧な説明やスタッフを含めた接遇、相談しやすい雰囲気づくりを徹底し、患者の声を診療体制の改善に生かしましょう。
参照元:医師のともキャリア(https://ishinotomo-tensyoku.com/column/news/kaigyoutaikendan/)
設備資金に加え、運転資金として家賃や人件費の3か月分のみを借り入れたものの、開業直後の収益が想定を下回り、資金繰りが厳しくなった事例です。
診療報酬は請求から入金まで時間がかかるうえ、入金後すぐに経費をまかなえるとは限りません。開業後に追加融資を申し込んでも、実績をもとに審査されるため、希望どおりに借り入れられない場合があります。開業前に収支計画を慎重に立て、売上の立ち上がりが遅れるケースも想定した運転資金を確保しておくことが重要です。
参照元:医師開業ロードマップ(https://www.clinic-ga.com/example/example-11.html)
開業準備に追われ、雇用条件や業務内容を十分に説明しないままスタッフを採用した結果、開業から半年ほどで受付スタッフが退職した事例です。引き継ぎを行う前に退職となり、残ったスタッフの負担が増えたことで、患者対応の質にも影響が出たとされています。
さらに、労働時間や給与計算に関する指摘を受け、労務対応に時間を取られる事態にもつながりました。採用時は、勤務時間・給与・業務範囲・残業の扱いなどを明確にし、就業規則や労働条件通知書を整えたうえで雇用しましょう。
参照元:医師開業ロードマップ(https://www.clinic-ga.com/example/example-6.html)
設計・施工業者の選定時に、医療施設の施工実績や連携体制を十分に確認しなかったことで、計画どおりに工事が進みにくくなった事例があります。
クリニックでは、医療機器に対応する電源・補強、防音、患者やスタッフの動線など、一般的な建物とは異なる配慮が必要です。設計意図が施工側に十分伝わらないと、仕様変更や工期・費用の増加につながるおそれがあります。業者の所在地だけで判断せず、医療施設の実績、提案内容、設計者や開業支援会社との連携方法を比較し、認識をすり合わせたうえで依頼しましょう。
参照元:医師開業ロードマップ(https://www.clinic-ga.com/example/example-32.html)
開業後の診療に専念するあまり、スタッフの教育や業務管理を十分に行わず、患者対応へのクレームや退職につながった事例です。
接遇ルールや業務手順が明確でないと、スタッフごとに対応が異なり、院内の連携も乱れやすくなります。問題が起きてから急にルールを設けても、日頃のコミュニケーションが不足していれば理解を得にくいでしょう。開業前から業務マニュアルや相談の場を整え、定期的に情報共有を行わなければなりません。
参照元:医師開業ロードマップ(https://www.clinic-ga.com/example/example-2.html)
診療方針や想定患者数に見合わない高額な設備を導入すると、返済負担が経営を圧迫するおそれがあります。たとえば、使用頻度を十分に見込めないX線装置を導入した場合、機器本体に加えて放射線防護工事や画像管理システムなどの費用も発生。導入後に十分活用できなければ、投資を回収しにくくなるでしょう。
機器を選ぶ際は必要性・検査件数・維持費を確認し、診療内容に合う投資額の見極めが重要です。
スタッフを採用できない、または採用後すぐに離職すると、診療体制が不安定になり、患者対応にも影響します。人材不足を補うために高い給与条件を設定しても、業務分担・教育体制・相談しやすい職場環境が整っていなければ定着は難しいでしょう。
繰り返す採用活動は、求人費用や教育の負担も増えていきます。必要な職種と人数を事前に整理し、労働条件や業務範囲を明確にしたうえで、開業前から採用・教育計画を進めましょう。
口コミだけで患者を集められると考え、ホームページや情報発信を十分に行わないことも、開業後の集患を妨げる要因です。患者は受診前に診療内容・診療時間・アクセス・院内の雰囲気などをインターネットで確認するため、必要な情報が見つからないと受診先の候補から外れる可能性があります。
ホームページを作成した後も、診療時間の変更や休診情報を放置すると信頼を損ねかねません。医療広告ガイドラインを踏まえながら、地域の患者に必要な情報を継続的に発信し、来院につながる導線を整えましょう。
建物・内装・医療機器などの初期投資に資金をかけすぎると、開業後の家賃・人件費・医薬品費などを支払う運転資金が不足するおそれがあります。また、開業直後から想定どおりに患者数や医業収益が伸びるとは限らず、資金繰りが厳しくなるケースも少なくありません。
開業後の追加融資は実績をもとに審査されるため、希望どおりに受けられない可能性があります。売上が安定するまでの期間を見込み、予備費や生活費も含めた資金計画が重要です。
「駅前なら患者が集まる」といった単純な判断だけで開業地を選ぶと、地域の受診行動と合わず、集患に苦労するおそれがあります。高齢者や子育て世帯が多い地域では、駐車場の有無や車で来院しやすい動線も重要です。そのため、周辺の競合状況・人口構成・交通手段・求められる診療内容を診療圏調査で確認しましょう。
さらに、感染対策・予約方法・情報発信まで含めた事業計画を立て、地域の患者に選ばれる理由を明確にするのがポイントです。
クリニック開業で成功するには、患者数や収益だけでなく、自身が実現したい医療と働き方の明確化が大切です。地域の患者層や診療ニーズを踏まえて開業コンセプトを定め、資金計画・立地・設備・スタッフ体制を一貫して検討しましょう。
また、開業後の生活や診療時間も見据え、無理のない経営計画を立てる必要があります。医療だけでなく、労務・資金調達・集患など幅広い準備が求められるため、必要に応じて開業支援会社や税理士などの専門家へ相談し、客観的な意見を取り入れることも重要です。
さらに、開業準備の段階で想定より患者数が伸びない場合や、スタッフ採用が難航する場合も想定しておくと安心です。複数の事業計画案を用意し、定期的に収支や運営状況を見直せる体制を整えれば、開業後の判断もしやすくなります。
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